概念図 日本企業、「新尺度」で浮上 3月17日から19日まで3回に渡って、経済教室「ニッポン経済 魅力再発見」というコラムが連載されました。各回の内容は示唆に富んでいましたので、まとめてみようと思います。第2回は【日本企業、「新尺度」で浮上 「見えざる資産」は大】です。 |
「アーサーアンダーセンeビジネスから引用」 |
連載各回の見出し | ||
3/17 上 経済文化で世界けん引―新・京都モデルに光:本マガジン4月2日号に掲載 <今井賢一 スタンフォード大学日本センター理事> 3/18 中 日本企業、「新尺度」で浮上――「見えざる資産」は大:本号 <竹内佐和子 東京大学大学院技術経営プログラム教官> 3/19 下 業績と雇用、連動して回復――ITで組織を結ぶ <藤井英彦 日本総合研究所主席研究員> |
||
記事内容の要約 日本企業、「新尺度」で浮上―「見えざる資産」は大 技術の信頼度など指標化 |
||
◆記事リード 日本企業の実力は、技術や製品を巡る顧客の信頼や、社会的ニーズに対応した製品の研究開発力などの面で、世界的にも極めて高い水準にある。利益率など従来の財務指標だけにとらわれず、こうした「見えざる資産」を組み込んだ新指標で評価すれば、日本企業はかなり浮上しよう。 ・・・は、記事文章を省略している記号です。 ■市場の評価を創造するとき 日本企業の価値は物差しを変えることによって大きく増大する。 ・・・企業再評価のための指標が求められるのは、一つには財務会計情報が企業の持つ実力や長期的な成長性をあらわさないとの認識が強まったからである。「売上高」「経常利益」やここ数年の「株主資本利益率(ROE)」「経済付加価値(EVA)」などの指標だけでは企業力(企業評価)を正しく評価できなくなった。 ・・・株価と企業価値は相関が薄いとの見方はロンドンエコノミスト誌などでも指摘されている。 ・・・新たな市場の評価をどう創造するか・・・それを考えるための鍵の一つは、「信頼」に基づく企業の客企業や消費者との「結びつき(関係性)」の強さである ・・・製品を長く使えることで得られる満足感や安心感という側面から評価する必要がある。つまり顧客と長い目でどう付き合うかという部分に評価の重点を置く。 ・・・従来、長期的な信用に応える技術、品質やサービスへの信頼度は日本企業が得意とする分野であり、日本的経営の根幹に存在していた。 ■社会的需要に対応する力も 数字で示すべきもう一つの大きな「見えざる資産」に、企業やその製品が社会全体の中でもつ価値(社会的ニーズへの対応、社会的適合性)がある。 ・・・便利さや機能性だけではなく、高い生活水準を実現するための社会的需要に応じて、技術の応用範囲はさらに拡大する。 ・・・欧州では、環境問題への取り組みを社会責任論と結びつけ、環境関連技術の資産価値を高めに算出する場合もある。社会的価値を高めれば、企業の信頼も高まるという好循環を目指したものである。 ・・・こうした試みは、言い換えれば、顧客との結びつきの強さや社会的インパクトが生み出す将来の価値を先取りすることで資産価値を再評価する動きの一例である。 ・・・新たな物差しからすれば、単純な米国流のリストラは企業価値を下げる要因となる。技術の信頼度と社会的有用性を高める仕事こそが、経営者の仕事と言えよう。 ・・・日本企業の隠れた世界的実力は、到底そうした尺度で測りきれるものではない。 ・・・日本企業の優位性をさらに明らかにするために、顧客との結びつきを示す顧客信頼度と、社会的ニーズへの対応・適合力の二つの数値(信頼係数)を追加してみたい。 ■研究開発から膨大な資産 積極的な顧客の信頼向上などの努力の成果は、端的に製品の売れ行きに表れる。さらにどんな製品がどんな顧客にとって価値の高い製品かという分析を組み合わせれば技術の成果(信頼度)と売れ行きの関係が一段と明確にできる。 ・・・顧客との長期的な結びつきを特に重視する日本企業の場合は、全体に欧米企業よりも、こうした「上振れ」の期待値が高まるとの結果が出る。それをポイント化すれば、日本企業の評価もおのずと高まるのである。 ・・・社会的ニーズへの対応については、たとえば二十一世紀の主力産業といわれる医療・健康・住宅都市環境・リサイクル・交通・安全関連の三分野を見てみよう。 この三分野では、日本の基本技術が圧倒的に強く、しかも、三分野合わせた国内大手企業の研究開発費は年間で合計五兆円をくだらず、その規模は世界的にもきわめて高い水準にある。我々の試算では、研究開発の結果生まれる技術が応用された場合の製品市場規模は、潜在的な社会的ニーズが大きいこの三分野については、失敗分を差し引いても、研究開発費の十五―二十倍に達する。 ・・・三分野などの社会システム関連分野に積極的に投資拡大していくことが欠かせない。ただし、こうした分野には、大きな規制の壁が立ちはだかっているのが現実である。 |
||
■ コメント ■ | ||
「見えざる資産」というキーワードに着目したい。 コンサルティング・ファームのアーサーアンダーセン(現在はベリングポイント株式会社)では以前、バリューダイナミクスというフレームで、クライアントの価値を評価しようとしていた。それは冒頭の図である。図の説明は次の通り。 ○目に見える資産―タンジブル・アセット(tangible assets) ・物的資産(physical):土地、工場、設備、在庫など。 ・金融資産(financial):現預金、投資勘定、売掛債権、負債や資本など。 ○目に見えない資産―インタンジブル・アセット(intangible assets) ・顧客資産(customer):顧客、販売チャネルや販売提携先など。 ・供給者資産(employee & supplier):人材および供給業者や戦略的パートナーシップなど。 ・組織資産(organizational):評判、経営者のリーダーシップ、戦略、ブランド、企業文化、 プロセス、組織構造、知的所有権など。 eビジネスの代表でもあるアマゾンやデルコンピュータなどは、企業価値の8割以上をインタンジブル・アセットが占めているという。 ビジネスモデルという視点からでは、新たな価値を提供できるモデルを構築するときに、供給業者と顧客の間に存在する目に見えない価値どれだけ把握し、見えざる資産とすることができるかどうかが、重要な鍵になると思われる。
■株式会社 投資工学センター 新しい視点での日本企業の企業価値算出、研究開発など無形資産価値の評価モデルの開発 |
||