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    2009年7月20日 第95号
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日経MJ 2009年7月1日(水)付け 15面【フードビジネス】

ネットでパン作り
火加減・時間「勘頼み」不要
 自分の属する業界以外ではどんなことが事が起きているのだろうか。
 ときには異業種の動向にもアンテナを向けてみましょう。
 わたしはおいしいパンに巡りあえると幸せな気分になります。
 そのパン、実はネットで機器を制御されて職人肌の味を提供しているとしたら。
 今回はパン焼きオーブンがインターネットにつながり、それにセンサーや製造ノウハウなどを組み込み、
 パンの生産システムを提供しているブレッドビズケアのビジネスモデルを記事から確認してみよう。
 
 ブレッドビジケア・ネットオーブン概念図
 (今回は漫画を取り入れてみました)

ネットオーブンの概念図

この図は編集者の独自の解釈で作成しているものです。対象となった記事とは関係ありません。


  記事の概要と編集者のコメント

 顧客は誰?
焼きたてパンを提供する小売店や飲食店。
レストラン、コンビニエンスストアなど。
・ナチュラルローソン
・スーパー「いちい」
・レストラン「シズラー」

 顧客の課題はなに?
パンの発酵、焼き上げ職人の勘と技術に頼ることが多い。
パンの発酵や焼き上げ時間は生地の種類や温度などによって異なる。

パートやアルバイトが主戦力になるようなチェーン店などは、
パン職人のような「勘」を彼らには求められない。

 商品サービスの特徴、売りは?
商品名は「BBCネットオーブン」。
その構成は、おもに次の二つで、これらの機器をネットに接続し、パソコンから指示を送る仕組みだ。

1.ドゥコンディショナー
  冷凍生地を解凍・発酵させる機器。
2.オーブン
  発酵した生地を焼く機器。

・電気使用量をコントロールするデマンド制御という装置を組み込むことで
 家庭用電源の単相100ボルトで稼動する。
 電気工事が必要ない

・機器が発する熱量は家庭用オーブンと同じなので排気工事も要らない
・初期投資は約250万円で通常の三分の一程度。

インターネットでパンの発酵、焼き上げが管理できる。
・チェーン店でも安定した品質を確保できる。

 システムの概要

本部などのパソコンで生地の種類と焼きあがり時間を指定しておくとその日の温度や湿度を機器が測定し、自動的に解凍、発酵・焼き時間を調整する。
パン生地を入れるタイミングや発酵する機器から取り出して焼き上げ気に入れるタイミングになるとアラームがなり、機器のモニターに表示されるので、作業を忘れることもない。
生地の焼き上げまでのレシピは、一般業務用ならば同社が登録しておく。
特別な生地hの場合は同社に依頼したり、自社で登録できる。
同社のオーブンは登録したレシピに沿って強火、弱火を自動的に繰り返す。

ワンポイント区切り線

 コメント

 利用者側はどんな課題を抱えているだろう。いくつか挙げてみよう。
こうした悩みを解決できる研究開発、商品・サービスの提供を心がけているわけだ。

誰でも製造をできるようにしたい。
安定した商品品質で提供したい。
独自の商品を提供したい。
従業員の兼務ができない。
店舗のランニングコストを抑えたい。
教育、研修コストを抑えたい。
初期投資や設備工事費を抑えたい。
機器に取られる面積を少なくしたい。
開業スピードを速くしたい。

 ブレッドビズケア(BBC)沿革を見てみよう。
東京を中心とするベーカリーチェーンのシステム部門が独立し起業した会社。
研究費など資金繰りに行き詰まり、ピザ宅配のストロベリーコーン副社長(6月末で退任)の玉置氏が新会社を設立、技術と開発担当者を引き取った。

 開発者たちの思い。
どんな夢を描いてこのビジネスモデルの構築に取り組んだのでしょうか。
研究費など資金繰りで大変な困難も経験したことでしょう。
「カネ」の問題はほんとうにしんどい。

システムづくりでは、パン職人のノウハウなどについてベーカリーチェーン時代に獲得し試行錯誤はできただろう。ただそれだけではすまないはずです。何度もテスト稼動を繰り返し、失敗の積み重ねて制御システムなどを作り上げたことでしょう。
察するに、システム部門ですからパン作りの現場には疎いところもあり、ずいぶん苦労があっただろう。
彼らの開発に賭けた情熱を思うとパンの味にまで伝わってきそうです。

 BBCの事業ビジョンなどをホームページから見てみよう。
・機器制御ノウハウ・調理加工技術・食材分析データなどをインターネットで配信する
・「食のプロセスをデジタル化するデバイス開発」

事業ドメイン(領域)の設定は次の通りです。
・「食」「ユビキタスネットワーク」
・ベーカリー業界をスタート地点
・各種フード業界の業務用インターネット厨房のシステム開発

目指すところは、
・厨房機器販売
・情報・技術・食材も同時に提供する
・フードビジネス界において消費者から求められている品質・安全・サービスを総合的にサポートする
・フードビジネスに貢献できるように取り組む。

 BBCの提供するシステム(仕組み)は具体的には次のような要素の関連性でユーザーにメリットがなければならない思われます。

三つの要素を満足させるには

このシステムを利用することで得られる収益から利用料などが算出されると推測します。
BBCの売上、収益にはどんなものが考えられるか。
単に機器を製造し販売するだけでは再投資もおぼつかなく、将来の事業発展にもつながりません。
導入時に発生する売上とその後継続して発生する売上と分けて考える必要がありそうです。

<導入時>
・クライアントへの厨房機器の販売、設置工事費
・業務用ソフトの販売
・初期システム導入、教育・訓練(機器とソフトを含む)

<継続的>
・機器およびシステムのメンテナンス費用
・システム利用(使用)料

ではこうしたシステムを構成する要素にはどんなものがあるのでしょうか。
推測の域を出ませんが次のような諸点ではないでしょうか。

・ネットワークと必要なハードウェア
・データベース(メニュー・レシピ・素材・酵母・センサー)
・業務用アプリケーションソフト
・制御アプリケーション
・24時間監視
・設備機器及びシステムのメンテナンス
・代替機器

 参考情報
ネットオーブンのコンセプトと概要を解説しています

ブレッドビズケアのサイトです。 
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  編集後記
 本メルマガはビジネス初心者の方を念頭において作っています。
 なるべく平易な文章や言葉遣いを心がけていますが、記事によっては発行者の独りよがりのところもあるかと思います。不明なところがありましたら、メールで感想なども含めてご連絡いただければと思っています。

 発行者にとってメールマガジン作成は表現力を鍛えるひとつの修練の場です。
 感性を養い、各種知識などを確認整理する絶好の機会と捉えています。
 
 さて、今回の事例ですが、 一つの業務などを標準化して使えるようにすると次のようなことが起こりやすくなりますね。
 ・そのやり方で誰でも業務ができるになり、効果を期待できる。
 ・ネットを利用すると遠隔地でも同じ業務が可能になる。
 ・ノウハウを数値化できれば匠の技に近づくことができ、その蓄積はさらに安定した品質をもたらす。
まもなくその使命を終える東京タワー
 いままではパンの生産システムがあったとすれば各事業体別に自社のノウハウを盛り込んだシステムを構築した。
 同様のパン作りをしている事業所がたくさんあるのならば、事業主体が違っても基本的な部分はみんなで使えるはずです。それを共有すればシステム構築にかかる費用などは大きく削減できます。職人さんに頼らざる得ない事業では規模を追求しだすとそれがネックになってきます。マクドナルドなどのチェーン展開を思うとこうしたシステムがその背後にあることが推察できますね。