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    2009年10月6日 第97号
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日経MJ 2009年9月25日(金) 18面 【マーケティングスキル】

かまぼこ、外部の力で販路開拓
あなたは今年かまぼこをいつ食べましたか?
月に何回、かまぼこを食べますか?
おそらく食べたことさえ忘れている方が多いでしょう。
また、かまぼこを買うという動機を持っている人はほとんどいないのではないでしょうか。
危機感が募るのも無理のない厳しい環境だ。
ちなみにわたしは酒のつまみには「かまぼこ」と「わさび漬け」がいい。これは稀有なケースかもしれない。
  情報や思考の整理のための枠組み

思考の整理のための枠組み

この図は編集者の独自の解釈で作成しているものです。対象となった記事とは関係ありません。
  記事の概要と編集者のコメント
 神奈川県・小田原の老舗高級かまぼこメーカー、小田原鈴廣の挑戦。

伝統食材は海外食材やメニュー、外食が多様化するにつれて食卓や外食メニューからもはずされる憂き目に会っている。一言でいうと人気がない。

 どうすれば新規需要は生まれるのか。

同社の悩みはすべての企業に共通するものでもある。メーカーにとっても大きな課題だ。
小田原鈴廣は新たな取り組みによって前年同期比二桁増という結果をはじき出したという。
その取り組みは記事によると次の三点だ。

・外食店と組み新メニュー開発
・調味料を添付して新たな味提案
・大学と連携、若者の発想で販促

 同社の方針は「伝統を失わないまま、定番を打ち破る価値をアピールする」こと。
切り口が新鮮であれば興味をそそられる消費者は多いと見る。

 では、同社の取り組みを記事から概観してみよう。

・外食店と組み新メニュー開発の事例
「生ハムと生野菜のかまぼこ」
横浜市のそば店「桑名屋」の新しいメニューだ。
切り身のかまぼこに生ハムをのせ、ミニトマトなどと一緒にサラダ気分でドレッシングをかけて食べる。

・調味料を添付して新たな味提案
父の日など特定の時期に合わせ、ゆずこしょうパックをかまぼこにつけて販売。
新鮮さを演出して購買意欲を高める。
かまぼこのレシピ集を今秋発売。書店で販売されるのは一部、ほとんどを購入者へのプレゼント、ホテルの部屋に備え付けるなどの販促ツールだ。
トヨタ販売店でタイアップして、新型プリウスのプレゼントキャンペーンを開始。

・大学と連携、若者の発想で販促
早稲田大学のゼミで一年間かけてプロモーション戦略立案の試みを開始。

 この内容をキーワードだけピックアップしてざっくりと図にしてみましょう。

革新といえるほど目新しいものはありませんね。
ただ同じかまぼこを販売する相手にとってはその差は歴然としているのかもしれません。
市場全体を底上げするための手立てが欲しいですね。これは業界挙げて取り組みことでしょうが。

記事のキーワードを図に表現してみた。


ワンポイント区切り線

 コメント

 現状を把握するために次のようなことが調べたくなりませんか。
・売上高、利益の推移は?
・商品の流れ(流通)は?
・販路は?
・価格は?
・商品特徴は?
・自社の特徴は?
・競争相手はどこ?
・競合商品は何?
・生産について影響する要因は?
・消費者の意識や声は?
・消費者のかまぼこに対する印象や感情は?
・かまぼこは消滅するのだろうか?
・市場規模の推移は?
・パワーユーザーの変化や声は?
・食に対する変化は?
・家庭や飲食関係のメニューの変化は?

 客観的に事業を見つめたいという欲求が働きますね。

現在の結果につながっている関連性や要因を見極めなくてはなりません。
調査をどのように進め、実査すればいいのだろうか。
予め市場・事業・消費の現場の状況の仮説を立てておきたい。
そのうえで基本的をデータを集めたりして調査結果を冷静に分析して、当事者が気がつかない大胆な視点で課題を発見したいものです。

 次に戦略を立てて方向付けを行いたくなりますね。

当事者の関係者と熱く議論し、わが社の存在意義やどんな会社にしたいとか、ビジョンを確認しておきたい。この事業を発展させたい、この会社をよくしていきたい、という情熱を感じたい。一人ひとりの思いをきちんと汲み取る繊細さが求められますね。いつ、どこで、誰が、これから何をどのようにすればいいのか浮き彫りになってくる。

 さて、ここで参考までにこうした事柄をマッピングするフレームがありますので提示しておきます。

冒頭のものがそれです。
何かテーマを決めたら、とにかくこのフレームのボックスに資料やメモを放り込んでおくといいでしょう。
もう20年以上前になりますが、企画のプロ高橋憲行氏が考案したものです。
一部改変しています。思考の整理に何もないよりはあったほうがいい。

 こうした変革の中でどんな人たちが推進しているのだろうか。

かまぼこに対してどんな熱い思いがあるのだろうか。
どんな活発な議論が行われたのでしょうか。
気になりますね。
携わっている人々がどのように変化していくのかで事業の行方はどうにでもなる。
仕事に必死に取り組むことは最高の人生です。仕事は確かに自分自身を磨くことにつながっている。

マーケティングの具体的内容はさほど新規性がなくてもいい。
選択した実施内容が効果的かどうかが問われなくてはならない。
そういう意味では、結果から見ると同社の取り組みは効果的だったということになります。
現場担当者の方々のガンバリが目に浮かんできますね。


 関連サイト

小田原鈴廣

かまぼこジャパン
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  編集後記
 戦略やビジネスモデルを立案するときにわたしはいつも三つの視点を大事にしています。

 一つは、オーバーエクステンションです。
自社資源の限界をあえてオーバーしているか。多少高めがいい。
希望的観測や常識の枠や悲観的見方という壁を破らなければならないからです。

 二つ目は、あえて不均衡のダイナミックさがあるか。
最適だけが解ではなくい。ジグザグしながらでも試行錯誤を続け目標に向かう喜びがあるか。。
見えざる資産のレベルが最終的には勝負を決する。それを蓄積しなければならない。
その源泉は、しなやかな人材と組織です。多少の不均衡さはあって当たり前。

 三つ目は、立案した戦略がぴったりあっているか。
借り物や机上の空論ではなくオリジナリティがあるか、みんなの心が一つになるかです。

 総じて情熱を沸き立たせるような挑戦的なものであるかですね。

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たまには文学に接するといいですよ。それとユニークな本を。

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