日経記事に学ぶビジネスモデル   2001/06/16 NO.24
広告料かけず手数料収入
ベクター ソフトのダウンロード販売

日本経済新聞 6月6日 企業3ベンチャー 【15面12版】
発行者のホームページ

ソフトダウンロード販売
ベクター http://www.vector.co.jp/

◆記事内容の要約

◆ 業 績
電子商取引に事業を特化して、二期目で黒字転換。
「広告費をかけないモデルが早期の黒字化につながった」(梶並社長)
2001年3月期
経常利益は、5千2百万円(前の期は、3千5百万円の赤字)。
ソフト販売本数は、前期比50%増の34万本。
売上高は、前期比2倍の7億5千万円。

◆ 経 緯
94年、パソコン通信で公開されている個人制作ソフトを集め、販売開始。
ソフトをCD-ROMなどにして書籍に添付、利用者がパソコン通信で検索 する手間を省いた。
ネット普及前に始めた事業が現在の豊富なデータベースになり、 ダウンロード販売で先行。
書籍添付販売では、取扱ソフトが増えるにつれ、CD-ROMも急増、 ダウンロード販売に切り替えた。

98年からインターネットを使って本格的にソフト販売を始めた。
ソフトの自社開発はしない。
広告宣伝はほとんどしないが、豊富な無料ソフトを武器に、 パソコン上級者のあいだで知名度を高めることに成功。

ブロードバンド通信が普及すれば、通信速度が向上し、ソフト取り込み時間が 短縮、利用者の増加が期待される。

◆ 仕組み
利用者は希望するソフトをダウンロードして自分のパソコンにとりこむ。
有料ソフトの販売手数料が収益源。
1本販売ごとに購入者から100円を受け取り、ソフト制作者からは製品 価格の10%を手数料として得る。
制作者が法人の場合、製品価格の18%に100円を加えた金額が販売手数 料になる。

◆ 商 品
ソフトの種類は7万近く、大半は無料。
約9千種類野の有料ソフト。

◆ 課 題
顧客の裾野拡大。
固定客は多く、パソコン初心者を取り込む必要がある。
ゲームソフトの充実など初心者にとって魅力的な品揃え努力。
パソコン上級者に頼る収益構造。

◆ 対 策
2001年4月から、人気ソフトを2―6割引購入できる有料会員サービス を開始。
NECと協力し、同社製PCを購入すると無料で会員になれるサービスも 導入。
今期中に50万人の新規会員を見込む。

◆ 競 合
大手ソフト会社のダウンロード販売参入。
窓の杜、ZDNet Downloadなども挙げられるか。

■コメント

 付加価値のある魅力的なコンテンツ(ソフト)では、以下が課題に なるか。
・新規分野のソフト調達
・無料ソフト制作者の育成
・優秀、人気無料ソフトの有料化
・人気ソフトの自社取り込み

 このときに「市場」「商品」「総合」「専門」というキーワードが ポイントになりそうだ。この場合、「顧客」「ソフト」「全ての分野」 「絞り込んだ分野」と読み替え、いかに品揃えをしていくかだ。
 次の組み合わせが考えられ、なぜ選ぶのかに答えられなければなら ない。

 1.市場と商品を総合化
 あらゆる顧客に、あらゆる分野のソフトを提供する。
 総合百貨店タイプといえる。どうしても広く、浅い品揃えになってく る。

 2.市場と商品を専門化
 特定の顧客層に、特定のソフトを提供する。
 品揃えは、狭く、奥深い専門店タイプといえる。

 3.市場を総合化し、商品を専門化
 あらゆる顧客に、特定分野のソフトを提供する。
 品揃えは、狭く、浅くなる。

 4.市場を専門化し、商品を総合化
 特定の顧客層に、あらゆる分野の商品を提供する。
 品揃えは、広く、深くなる。

 記事から想定すると現在は、4.に相当し、パソコン上級者に幅広い (ただし、限られた範囲)分野のソフトを提供しているといえる。
 パソコン初心者まで顧客の裾野を広げるとは、今以上のソフト分野か ら品揃えをすることになる。ソフト分野の広がりを意味する。
 私見だが、パソコン初心者を中級へ、上級へと育てるコミュニケーシ ョンを開発し、2.のタイプのカテゴリーを充実させたほうがいいので はと思う。ゲームソフトの顧客層開拓は新規事業分野とはいえないか。


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