概要図 ネスレのブランドの位置付け(記事中の図を参考に作成) |
◆ 記事リード | |
「世界の工場」中国の台東などで低価格圧力が世界に広がるなか、7年連続で過去最高の純利益を上げる企業がある。スイスに本社を置く食品大手ネスレ。2002年12月期の純利益は約6,800億円と10年前の2.8倍、売上高も1.6倍になった。売上高は日本の食品業界の雄、味の素の8倍だが、株式時価総額は10兆円を超え、味の素の15倍。「デフレ知らず」の高収益の秘密はM&A(企業の合併・買収)で取得した8,500ものブランドがある。 | |
◆ 記事内容 | |
最強のブランド戦略 | |
■ 「狙いを絞った買収戦略は特定の地域や分野を拡充するための当社ならではの手法だ」。4月、スイスのローザンヌで開いた株主総会。グート会長は集まった2千人あまりの株主を前にM&A戦略の効果を訴えた。 ■ 買収の基準は「(その分野の)トップかそれに匹敵する二番手になること」(ライヒェンバーガー最高財務責任者)。狙いはずばり市場を買うことだ。生活に密着した食品の場合、価格以上にモノを言うのが消費者の「信頼」。長い年月をかけて消費者に浸透した強力なブランドを握ることが市場確保につながるという考えがある。 ■ 調味料の「マギー」、ペットフードの「フリスキー」、ミネラルウオーターの「ペリエ」、チョコレートの「キットカット」、パスタの「ブイトーニ」……。世界に慣れ親しまれたブランドを買収後もそのまま生かし、「ネスレ」の名は表に出さない。 ■ だが単にブランドを増やすだけではない。高品質の商品を供給する製造過程や品質管理、物流などの事業運営はネスレ流に一新。買収ブランドに「磨き」をかける。そのブランド拡張戦略の真骨頂を見せたのが2001年12月「ピュリナ」ブランドのペットフード会社、米ラルストン・ピュリナの買収。 ■ 「フリスキー」など既存事業との統合で、2002年12月期のペットケア部門の売上高は約9,600億円と前年より72%増加。同市場で世界一となったが、素早い経営統合による相乗効果の創出でEBITA(利払い、税引、無形固定資産償却前の利益)は3.1倍の大幅な伸びとなった。) |
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効率的的に運営するための送別管理 | |
■ 膨大なブランドを効率的に運営するため階層別に管理する。「ネスレ」「マギー」「ピュリナ」などの最重要ブランドは「コーポレートブランド」として世界展開に活用。さらに「ミロ」「ポロ」「ヴィッテル」などの70余りの主要商品を「世界戦略ブランド」とし、スイス本社でラベルやロゴ、広告などを一元管理する。。 ■ 一方、地域に密着した「地域戦略ブランド」はその活用権限を地域会社に大幅に移譲。移譲にあわせた柔軟な戦略展開を可能にする。 ■ 昨年は電子レンジ食品の「シェフ・アメリカ」やアイスクリームの「ドライヤーズ」の買収で合意。「ハーゲンダッツ」の一部販売権や「モーベンピック・アイスクリーム」のブランドを相次いで取得、アイスクリームも「世界一」を目指して買収戦略を加速する。 ■ 日本企業が中国などの台頭で瞬く間に価格競争に巻き込まれたのは、品質への評価をブランド力に結びつけ、「高くても売れる」という次の進化に適応できなかったからである。そんな日本企業の苦悩をよそに「ブランドこそ企業価値」というネスレは世界市場の攻略を着々と進めている。 |
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■ ブランディングのための概要図 | |
■ コメント | |
ブランドとは、「物言わぬ優秀な営業マン」とか「競合他社に対する強力な競争優位の源泉」といわれている。自社の特徴、らしさ、強さを明確に打ち出す「商品・サービス」と「従業員の振舞い」のブランディングを心がけたい。 |