日経記事に学ぶビジネスモデル    2004/02/19 NO.56
発行者のホームページ

■■ 次世代ゲーム機の投入 任天堂当面見送り ■■
ソフトに集中 機能競争とは距離おく
日本経済新聞 2004年2月10日(火)企業総合 14版

概念図 ゲーム機のポジショニング



  ◆  記事リード

 任天堂は家庭用ゲーム機で現行の「ゲームキューブ」に続く新モデルの発売を当面見送る方針だ。キューブを中心に新開発の周辺機器を活用して、ソフトの多様化で楽しめる遊びの幅を広げる。ソニー(SCE)と米マイクロソフト(MS)が高機能の「次世代ゲーム機」を発売する計画なのに対し、任天堂はハードの機能性よりもソフトの魅力向上を重視した路線を鮮明にする。


  【1】記事内容を次のように整理してみた

自社の強み(S)
・「マリオ」「ポケモン」など子供に人気のあるソフトを持ち、ソニーやマイクロソフトが取り込めていない低年齢層市場に強い。


自社の弱み(W)
・ゲームキューブ:2001.9発売、累計千数百万台どまり。過去の同社ゲーム機比べ、販売不振は顕著。
・高機能半導体など本体に不可欠なキーデバイスの開発・製造部隊を持たない。
・先端技術力でハード機市場を牽引するのは難しい。
機 会(O)
・顧客は今のゲーム機の機能に充分満足している。




脅 威(T)
・ゲーム機市場全体が縮小、多様化を強める。
・SCE:PS2のデジタル家電化志向(次世代半導体を使い、ゲーム以外にも映像や音楽などさまざまなコンテンツを楽しめる)
・MS:複合機能モデル志向(ソフト技術を活用してあらゆる機器を相互につなぐ基盤を整備する)

  【2】任天堂の今後の方向付けを次のように整理してみた

◆ アダプターや操作端末などの周辺機器を発売する計画。
  体感型ゲームや携帯型ゲーム機との連動といった多用な遊び方を想定したもの。
◆ 買い替えを促す新機種を出さない。
◆ 2〜3年はソフトの魅力向上につながるような機能をゲームキューブに追加し、
  他社の「次世代」への対抗軸に据える。
◆ 現行機の能力が許す限り、新しいソフトの開発、供給を続ける。
◆ 家電やコンピューターの会社と同じ土俵で戦ってもまず勝てない。
  ソフト開発で差を出すのが最善の策。ハードの機能競争からの決別。
◆ 得意とする子供中心のゲーム市場で存在感を強めて生き残りを目指す戦略。


  ■  コメント

 現在の商品では市場は衰退する。そのなかでの戦略選択、ビジネスモデル革新の問題だ。成長期、成熟期での準備が問われることでもある。次のライフサイクルまでにどのような準備をするのか。技術革新の早い市場だけにいかに見通しを立てるかが、次のステージの勝敗につながってくる。
 任天堂は、ゲーム機という単一機能分野で、絞り込まれたターゲット層<強み>を事業領域に定めたのは上記のSWOT分析から当然といえる選択だろう。
 2004年1月21日 同社のニュースリリース 「二画面」新携帯ゲーム機の発売に関して を一読すると良く理解できる。
 SCEとMSは任天堂とはおのずと違う方向を目指している。それは「ゲーム市場」を単なるひとつの市場とみなしている点だ。やがて「ゲーム機」は、家庭における「メディアセンター」というものになるという読みが窺える。これは「デジタル家電」といわれる領域だ。

 
関連する情報、会社などのURL

 関連する情報およびURLは以下のとおりです。
 ■2月13日付日経夕刊 ビジネス 3面4版 【デル、ゲーム機参入】
 ■2月13日付日経朝刊 企業1 13面14版 【電子復興 第4部 強い部品 一芸磨き小インテル】
  高付加価値部品に飛び移る「ヒロセのコネクター」。強みを発揮している例を挙げている。

 1.日経ITビジネスニュースサイト(ゲームビジネス)
   関連記事の見出しと導入部分が読めます。
 2.ゲーム機市場、衰退期に入る - 2006年には新世代機の台頭で上向きに
   同社では、2003年のゲーム機出荷台数は前年比200万台以上の減少になると予測する。
   出荷台数の減少傾向は2004年まで続き、それ以降は成長期に入るという。
 3.世界のゲーム機市場は08年に350億ドル 英社予測
   英ジュニパーリサーチは3日(英国時間)、
   世界の家庭用ゲーム機市場が08年に350億ドル規模に達するという予測を発表した。


購読の登録と解除およびバックナンバー
スタンド一覧がありますので、 配信を受けているところで解除もしくは登録してください。
意見・感想・質問・相談等     info@dsp-net.com
発行  ソリューションパートナー     発行責任者  内山秀雄
Copyright by Doctor Solution Partner 2004