◆記事リード |
引越し各社が通信販売事業への参入を本格化する。専業大手の引越社(東京・中央)は今月から自社によるカタログ通信販売事業を開始。リビング関連用品などを中心に取り扱う。ヤマト運輸グループの引っ越し会社も、秋をメドに全国特産の食材などの通販に乗り出す。サカイ引越センターや松本引越センターなども取り扱い品目を拡充、収益の柱に育てる。
|
記事内容の要約 |
■引っ越し各社の取り組み
●引越社
・自社発行カタログ「ジュンヴィ」で通販事業を開始した。
・カーテンシュレッダー、クローゼット、ごみ箱など約270種類の商品を販売する。
・顧客からの注文は、大阪市内に設置したコールセンターの10人のスタッフで対応する。
・引っ越しをした顧客のなかで、希望者に継続的に通販カタログを送付する。
・年間3回であわせて30万部のカタログを発行する。
・年商4億円を目指す。
●ヤマト運輸グループの引っ越し会社、ヤマトホームコンビニエンス(東京・中央)
・秋をメドに全国の高級食材の通販を手がける。
・全国に約400ヶ所ある営業所などの拠点を活用、各地の名産品などの情報を集める。
・宅配はヤマト運輸の輸送網を用いる。
・引っ越しをした人を中心に年間25万人に商品チラシを送付する。
・客単価は3〜5千円程度。
・庭木の手入れやホームクリーニング、バイク移送など生活関連サービスの提供事業も強化。
・3年後をメドに年商50億円程度を目指す。
●サカイ引越センター
・4月から引っ越し作業員が着用するソックスの通販を開始した。
・5足セットで1,500円。サカイのトレードマークのパンダがついている。
・今年から通販カタログの発行を2回から4回に増やすなど、通販事業を強化する。
●松本引越しセンター
・防犯関連グッズの販売に加え、盗聴機発見サービスなどを拡充する。
●アートコーポレーション
・通販専門カタログを発行する。
■通販事業参入の背景
・企業収益の悪化で長距離移動を伴う引っ越しが減少、単価が下落していることなどがある。
・各社とも通販などの強化で、引っ越し以外の収益確保を狙う。
|
|
■ コメント ■ |
引越し各社のもつフットワークをいかに活用するかという視点で新たな収益の柱を展開しています。
引っ越しという言葉から連想される生活関連の商品やサービスの提供がその中心になっています。
そのなかでヤマトは高級食材に、松本は防犯関連などに着目しているのは面白い。
この選択だけで、他社の注力していない分野で一番になれる可能性が高いからです。
これらのサービスを受け取る生活者もこうした差別化がされていれば、○○商品は□□社のカタログを見ようという強い動機付けがされます。
各社のこのようなカタログは誰が企画し、編集加工しているのでしょうか。
当然そこには商品やサービスの確実な提供がなされなくてはなりません。
私はここにもうひとつのポイントがあるように思います。
情報の収集、編集、加工ができる機能がなくては成立しないからです。
この機能と役割の充実がこれらの通販事業の命運を握っています。
さて、引っ越し各社は言うまでもなくひとつの物流網を築いています。
世界最大の小売業であるウォルマートの成功の鍵は何か。
伊藤教授(東大大学院)は次のようにして指摘しています。
「この企業の真の強さは、店の背後にあって見えにくい中間流通の部分にある。ウォルマートは世界最強の中間流通業者が小売店も展開しているとみたほうが分かりやすい。強力な中間流通の機能がなければ、あれだけの店舗を効率的に展開できるはずはない」。
この中間流通業者としての機能発揮が底知れない可能性を秘めているといえないだろうか。
販売拠点を持つことだけではなく、未知のフロンティアです。
こうしたフロンティアでの事業は、現在における枠組みにどうしてもとらわれてしまいがちになります。ビジネス界の保守的な考え方に陥ってしうのでしょう。一歩踏み込むためには足元から徹底的に変革することが必要になります。それは冒険心と言ってもいい。
|
|